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Otahara Veterinary Clinic / OVC
2026.06.27

犬がうんちを食べる「食糞」——叱っても直らない本当の理由

「うちの子、自分のうんちを食べるんです……」

こういう相談は、言い出すまでにずいぶん時間がかかることが多いです。診察の最後に、思い切ったように切り出してくれる。「こんなこと聞いていいのかと思って」と付け加えながら。

恥ずかしいことではないし、珍しいことでもありません。食糞と呼ばれるこの行動は、犬に見られる問題行動の中でも相談件数の多いもののひとつです。そしてほとんどのケースで、対処を間違えると長引く。その「間違い」は、叱り方ではなく、叱ること自体にあることが多いです。


叱ると、なぜ直らないのか

「見つけたら必ず叱っています」という飼い主さんほど、長期間悩んでいることが多いです。

叱ることで問題が解決しない理由は二つあります。

一つは、叱ること自体が「反応」として学習されてしまうこと。犬はうんちを食べたときに飼い主が素早く近づいてくる、声を出す、注目が集まる——という一連の出来事を経験します。「うんちを食べると飼い主が来る」という学習が成立してしまうことがあります。

もう一つは、叱ることが不安やストレスを高めるということ。そしてストレスや不安は、食糞を起こしやすくする要因のひとつです。叱ることで、食糞が増えるという逆転現象が起きることがあります。

【行動学の視点から】
食糞の多くは「意地悪でやっている」「反抗している」わけではありません。叱るべき「悪い行動」として捉えると、対処の方向が最初からずれてしまいます。


食糞が起きる、よくある理由

食糞の原因は一つではなく、複数が重なっていることもあります。よく見られるのは次のようなケースです。

「隠そうとしている」
過去に食糞を叱られた経験があると、「うんちがあると怒られる、だから消さなければ」という学習が生まれることがあります。うんちを食べること自体が隠蔽行動になっているケースです。叱り続けることでこの学習が強化されます。

消化・栄養の問題
消化酵素が不足していたり、食事の量が少なかったりすると、うんちにまだ栄養分が残っている状態になります。犬の嗅覚はそれを感知します。フードの種類や量、消化器系の状態を見直すことが出発点になるケースが多いです。

退屈・ストレス・刺激不足
運動量や刺激が不足しているとき、口を動かすことで気持ちを落ち着けようとする犬がいます。食糞がその一形態になることがあります。

【ケーススタディ】
テレワークが増えて飼い主さんが家にいる時間が長くなったのに、散歩を減らしていたご夫婦のケースがありました。「家にいるんだから大丈夫かと思って」——でも犬には「一緒にいること」と「運動・刺激」は別物です。食糞が始まったのはその時期からでした。


カップルで対応がバラバラだと長引く

食糞の相談には、もう一つよく見るパターンがあります。

先日こんなご相談がありました。共働きのご夫婦で、最初に話を切り出したのは奥さんのほうでした。「私は叱ってやめさせようとしてるんですけど、夫が"気にしすぎ、犬なんてそんなもん"って言って、何もしないんです」。

ご主人は悪意があるわけではない。ただ、深刻に受け止めていなかった。その結果、一方は叱り続け、もう一方は見て見ぬふりをする、という状態が数ヶ月続いていました。

犬の立場からすると、同じ行動に対して反応がまったく違う二人と暮らしていることになります。この一貫性のなさが、行動をさらに不安定にさせることがあります。

【大切なこと】
「叱らない、静かに片付ける、原因を一緒に探る」——方針をそろえることは、犬のためでもあり、二人の連携のためでもあります。対応がバラバラなまま続けると、食糞の問題より先にカップルの間に溝ができます。


見つけたら何をするか

「じゃあ見つけても何もしないほうがいいんですか」という質問は必ず出ます。

正確には、「リアクションを抑えて、静かに片付ける」です。

うんちをしたらすぐに片付ける習慣をつけることが、現実的にもっとも効果のある対処法のひとつです。食べる前に消える、という環境を作ることで、行動が起きる機会そのものを減らしていきます。叱る前に片付けが先、です。

並行して、食事内容・量の見直し、散歩や遊びの頻度の見直し、ストレスの原因がないかの確認——こうした「なぜ起きているか」の整理が必要になります。原因によって対処が変わるため、一つひとつ確認していくことが遠回りのようで一番近い道です。


まとめ

「気持ち悪いし、どうしていいかわからなくて」と言いながら来た飼い主さんが、帰り際に「ちょっとすっきりしました」と言ってくれることがあります。

何が解決したわけでもないのに、「なぜ起きているか」がわかると、不思議と落ち着けます。

食糞は、適切なアプローチを続けることで改善するケースが多いです。まず叱ることをやめて、静かに片付けるところから始めてみてください。そして「なぜうちの子はこうなったんだろう」という問いを、できれば二人で考えてみてください。

食糞以外の行動の問題、たとえば分離不安や攻撃行動との組み合わせについては、こちらの記事もあわせてどうぞ。

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